Yamaguchi Prefectural Grand Medical Center

山口県立総合医療センター へき地医療支援センター

心を通わせることは、人間にしかできない


Sotaro Jinnouchi

 

専門医/陣内 聡太郎 先生


 

Profile

■光市室積出身

■総合診療専門医・家庭医療専門医

ずっと仕事が生活の中心でしたが、結婚して子どもも生まれたので、プライベートな時間を大切にしています。最近またバスケットボールをやりはじめたので、社会人リーグにも出場しています。



教えてもらう立場から逆の立場になった

 

専門医になって、教えてもらう側から教えていかないといけない立場に変わったこともあり、昨年はm-HANDS(中国ブロック支部の指導医養成コース)プログラムにも参加しました。これまでは、後輩の自治医大の卒業生や専攻医と一緒に過ごしましたが、これからは、学んだことを踏まえて「教育」というコンテンツを自分で確立させる新しいチャレンジの年になります。

 

今年から学生さんの受け入れや専攻医のメンター(進捗状況などのメンタリングを行う立場)にもなり、学生さんと研修医では、モチベーションや覚悟、責任なども違ってくると思うので、それぞれの立場に応じてニーズをきちんと把握して、「押し付けにならない指導」をすることを心がけています。また、知識を蓄えるだけでなく、社会人としてどう自立させることができるかも大切になってくると思っています。


病気以外にも目を向ける。幅広い視野を持つ

 

コロナ禍以降、オンライン教育やハイブリット開催が当たり前になり遠方からでも参加したり、現地かオンランかどちらか選択できるようにもなったことで、教育にムラができにくくなったと思います。

 

ただ、自分もそうでしたが、医学教育を受けていると、とかく「病気」に目が行きがちで、新しい治療法などのトピックスがでたりすると、そこを極めたいと思ったりしたこともありました。でも、多くの患者さんは風邪などの家庭での対処法を知りたがっていたり、コロナがきっかけで気持ちが落ち込んでいるとか、日々の生活の中の不安とか、病気以外のところで悩まれることも多いです。

 

総合診療医は、その方の社会環境や、患者さんの持っている「ライフヒストリー」を大切にします。置かれている立場や価値観も含めて、単に病気を治療するだけでなく「その人を総合的に診る」チカラも養っていくことが最も大切かなと思っています。


先生に診てもらってよかったと言われたい

 

昨年、専門医になって1年目で、後輩を一人抱えつつ、やっぱり自分自身が判断に迷ったりすることもありました。その時は、へき地医療支援部や各科の先生方に相談したり、研修医時代の同期に連絡したりすることで、医師間の情報共有やネットワークを活用できたことが大きな支えにもなりました。

 

患者さんとのやり取りの中で、はじめはうまくコミュニケーションとれていなかった患者さんにも、その方の要望を細かくお聞きしたり、お互いの気持ちや思いなどを会話を通じて理解していき、少しずつお互いのコミュニケーションが取れてきて、最後に「先生に診てもらってよかった」と言われた時は本当に嬉しかったです。

 

一緒に対応していた専攻医も患者さんの背景とか生活環境とかの情報を共有することで、同じようにコミュニケーションを高めていくことができたので、患者さんの快方と共に、専攻医の成長も同時に感じることができました。


家族と同じように患者さんを診る

 

以前勤務していた周防大島町で多職種や住民の方とも仲良くなれて、今年からバスケットの社会人リーグにも出場することになりました。その場所で広がって培ったコミュニティが今も続いていることをとても嬉しく思っています。また、結婚して子どもも生まれたので、毎日家に帰るのが楽しみです。以前は働くことが生活の中心で、夜遅くまで病院に残っていたりしていましたが、今は休日のありがたみとか、家族との時間が大切だと思うようにもなれました。

 

これからは医療業界にもAIなどが台頭してくる時代だと思いますが、心を通わせることは人間にしかできないことだと思うので、家族と育んでいる気持ちと同じように、もっと広い視点で患者さんと向き合えたらいいなと思っています。果、「この地域で暮らしていけてよかった」という感謝の言葉に達成感や魅力を感じます。

 

明日の地域医療は明日の日本の医療を支えます。その要である総合診療医の良きフィールドとして、今後も豊田中央病院は働きがいのある職場環境の整備を進めていきたいと考えています。