Toyota Central Hospital

下関市立豊田中央病院

地域のための医療は、

地域の人との連携と信頼で築かれています。


Takahiro Yoshidomi

 

指導医/吉富 崇浩 先生


 

Profile

山口市出身

■自治医科大(平成10年卒)

妻と子ども3人で暮らしています。趣味は子どもの写真や動画編集と1年くらい前から、野菜を作るために畑作りをしています。



長州総合診療プログラムの特徴と利点

 

私たちの「長州総合診療プログラム」は、へき地の中小病院や診療所を中心に、設備や人員が限られた環境で医療を提供する現場です。人員が限られているがゆえに、医師だけでなく多職種との関係が近く、チーム医療、多職種連携を深めていくことができます。

 

また地域にとって唯一の医療機関が診療所であることが多く、地域の重要な医療拠点として責任をもって医療に従事する姿勢が身につきます。これは、総合病院や都市部の大病院では経験できにくい、主体性のある現場経験です。


コロナ禍という局面、

地域の人と信頼の絆で乗り越えられた

 

2019年から世界中で吹き荒れたコロナ禍の中、2022年には公立病院として私たち豊田中央病院も下関市のコロナ患者の全病棟受け入れ態勢をとることを決定しました。これによって、地域の方々への医療提供に支障が出ないか、住民やスタッフに不安や負担をおかけしないか、非常に悩み、またできる限りの対策をスタッフ全員で心を一つにして取り組み対応していきました。

 

私たちにも初めての経験であり、何が正解か悩みながら決断していく日々でした。地域医療の取り組みとしてこれまで力を入れていた出張講座や地域との交流会などは、開催中止になりました。しかし、これで地域とのコミュニケーションが薄れた事はありませんでした。今まで色々なかたちで共に地域医療の課題にとり組んできた「まちづくり協議会」の方々や、地元の開業医の先生、スタッフのご家族、その他多くのみなさんが「豊田中央病院が大変な中がんばっているのだから」と、様々な形でサポートや協力体制をとってくださいました。

 

これも、地域のみなさんと長年共に取り組んできた「信頼感」があればこそだった、と深く感謝をしています。地域医療というのは、医療機関の一方的なサービス提供ではなく、共に今この地域で生きる人を支えあう、確かな連携を育てる事だと思います。

総合診療医としても人間としても、

成長するフィールド

 

これからの日本の地域医療は、高齢化過疎化によって縮小の道を辿ります。これからの地域医療は、そのなかで生きる人たちへのサービスをキープし継続させていくために、地域医療人材を育てること、バトンを渡していくことが、大きなミッションだと考えます。

 

2018年からスタートした「豊田発シモノセキ・キラキラプロジェクト」は、山口県の山間部における地域包括ケアシステム構築と人材育成研究のプロジェクトです。豊田中央病院を中心に、介護サービス事業所、介護施設、地域包括支援センター、社会福祉協議会、保健センター、民生委員をはじめ消防署や交番、市役所など行政官関係や、町おこし協議会やそのスタッフ、大学生のチームなども加わり「地域ネットワークの連携強化」「将来の医療人材へのアプローチ、育成、地域理解の交流」を年度ごとに積み重ねてきました。

 

コロナ禍の時期はリモート対応となりイベント開催は見送られましたが、活動は継続して取り組んでいます。専攻医の先生には、若手地域医療メンバーとして、また学生に近いフレッシュな感覚を持つメンターとして、プロジェクトの進行等のリーダーを担ってもらいました。このように、単なる医療現場だけではなく地域の生活そのものに接し、地域の明日を創って行くことまで関わり、力を発揮してその一員となる。

 

通常医療の他にこのようなプロジェクト運営をリードするのは大変だったと思いますが、反対にたくさんの人からの学びや気づきをいただけます。地域医療というのが、普段は見えにくい多くの方の手を集め協力してつなげていくものだということを知り、メンバーのモチベーションを上げて成果を上げるために何をすれば良いか等、少し大きな視点を持ちマネージメントの面まで経験できる、人間的にも成長の機会になっています。地域医療という現場は、地理的に不利で医療資源の限られた環境だからこそ、臨機応変に対応して得られた結果、「この地域で暮らしていけてよかった」という感謝の言葉に達成感や魅力を感じます。

 

明日の地域医療は明日の日本の医療を支えます。その要である総合診療医の良きフィールドとして、今後も豊田中央病院は働きがいのある職場環境の整備を進めていきたいと考えています。


こつこつ、ぶれずに。

人の話を聞く医者になる道を歩いています。


Rika

Kashiwa

 

専攻医/柏 理果 先生


 

Profile

■岩国市出身 

■岩国高校〜自治医科大

■専攻医1年目

小中学校時代はソフトボールや駅伝、高校は陸上部で中距離に熱中。現在は飼っている猫を可愛がることが趣味。1年前に結婚した夫とは、早く帰った方が夕飯つくりを担当しています。



ブラックジャックは

全部治せるのがかっこいいな

 

小学校の高学年で読んだ『ブラックジャック』がきっかけです。どんな病気も全部治せるってかっこいい…ここから「医者になる」目標が生まれました。そこからずっと、進路は「医師」からぶれていないんです。

 

中学高校時代は駅伝や陸上部で中距離走に熱中し、受験勉強は難しかったですが同じ志の仲間とがんばることができました。1年ではおそらく難しいから浪人覚悟で、2年目に次にダメだったら諦めよう、と挑んだ受験で自治医大に合格し入学しました。ずっと「医者になる」という目標を諦めずにコツコツとやってきたら、道が拓けた、という感じです。負けず嫌い、という部分があるかもしれませんね。

 

総合診療医という道を選択したのは、仲間とフットワークよく勉強に遊びにと充実した大学生活をおくるうちに、私は「人の意見を聞いてくれる」医師がいいな、というイメージを持つようになったからです。いわゆる昔ながらの堅苦しい医師、ではない感じです。それには「総合診療医」の勉強が最適だと思いました。

 

それに、9年間の義務年限中に専門医になれることも現実的で大きな魅力です。総合診療医として現場に立ちつつ具体的な専門分野を見つけて行きたいと思っています。

患者さんの生活を考えるのが地域医療

 

赴任して数ヶ月ですので、「自分が決めた治療で進む」この責任の大きさと大変さ、に今はいっぱいです(笑)。研修医の時は多くの指導の先生の指示を後から学んでいました。しかし今は自分が主治医で診断していきます。もちろん分からないことや困ったことなどがあれば、院長やその他の先生方のサポートを受けますが、責任感が全く違います。

 

先日、患者さんの退院に関してスムーズに進めることがむずかしいケースがありました。退院後の環境調整まで万全にして帰宅できることが理想なのですが、充分ではない中でご本人が「すぐ帰りたい」と強く言われて。ご本人のお気持ちもとてもよく分かりますし、その上で安全な生活を確保できるように整えたかったのですが…。

 

吉富先生に入っていただき、話の聞き方やコミュニケーションの取り方など身近で学びました。この後に環境調整に関する資料などもいただいて大変勉強になりました。

 

祖母が周防大島に住んでいますので、今までにもへき地医療や地域医療の現場には接することもありました。しかし自分の現場として立つと、やはり患者さん一人ひとり、状況も事情も違うことを実感します。地域医療支援のスタッフと協力してどの方も家での生活をサポートできるように、そこまで考えるのが地域医療の役割だと思います。


総合専門医としても人間としても、

成長するフィールド

 

正直まだ数ヶ月ですので、日々患者さんに向き合うことで精一杯です。そんな今、「目標」ということばで頭に浮かぶのは「この地域で多くおられる高血圧・糖尿病・脂質異常症などの身近な慢性疾患のコントロールを上手にできるようにする」「入退院の流れや環境調整などをスムーズにできるようになる」など、まず目の前のひとつひとつをしっかりできるようになることでしょうか。

 

将来的には、まだどんな現場で何をやっていくかも勉強中です。ゆくゆくは、専門分野も身につけて自分の技術をしっかり修得して、手を動かしていきたいと思っています。

 

だからこそ、いまのこの環境は、自分が主体的に現場に関わり、患者さんや地域の生活を生で知る貴重な現場だと思っています。患者さんを流れるように次に渡していく都市部大病院などでは経験できないと思います。日々コツコツがんばっていくと、総合診療医の広い場所にたどり着けると信じています。

 

このプログラムを選択していちばんのメリットは、たくさんの先輩の方々の手厚いサポートを受けられること。学ぶべきこと、課題も明確でアドバイスも受けられますし、困ったときには多方面から指導してもらえます。反対にこれをとらなかったら何をやったらいいのか一人で右往左往すると思う(笑)。私も専攻医としてスタートしたばかりですが、一緒にがんばりましょう。