Susa Medical Center

萩市国民健康保険須佐診療センター

医師が地域に求められるというよりも、

私個人が求められているという実感がある


Nobuo

Sakuma

 

指導医/佐久間 暢夫 先生


 

Profile

■山口市出身

■自治医科大(昭和61年卒)

■家族:既婚 妻、子ども3人

■趣味:エアロビクス、ランニング

    ウォーキング、ゴルフ、墨画

    美術鑑賞、アニメ



あらゆる場面で医療を知り

勉強できる現場がある

 

へき地地域で医療役割を担う国民保健診療所の業務は、個人開業医院や総合病院とは違い、たいへん多岐にわたっています。保健、医療、福祉などの広角的活動が必要です。学校医、産業医、病診連携、行政との関わり(というよりも行政の一部)、乳幼児検診・予防接種。介護保険。医師会活動…。地域の生活そのものを多方面から広く細かく支える重要な役割を担っています。

 

また、診療所の管理者としての業務もあります。職員管理、予算、収益に関することなどです。萩地区では休日急患診療センターでの一次救急診療も担当しています。まさに「身体・心理・社会」「予防から救急、介護まで」「子どもから終末まで」あらゆる場面での医療を知り勉強することができる現場といえるでしょう。

個人が求められているという

他では味わえない充実感

 

一般に経営が成り立たない(開業医がいない)地域に、必要とされる医師が「総合診療医」です。専門性にこだわらず、まず診療する必要があります。

 

患者ファーストで対応し、何が必要なのかを診察・判断し、次につなげていく人材が強く求められています。その中で大切なのは人とのコミュニケーションと信頼です。

 

「医師」のスキルはもちろんですがそれ以上に、住民の方たち、スタッフやチーム、行政の方たちとの意思疎通や理解が深まるにつれ、ともに生きる「『私個人』が求められている」という実感を持つようになりました。

 

この充実感は、なかなか他の地では体験できないものだと感じています。

自分自身をブレイクスルーし

広く深い世界を学んでいくこと

私自身は、専攻医時代にこの川上地区へ赴任したことが人生の大きな出逢いとなりました。

 

この地域で実践したい医療を実施することができ、子育てや家族との時間も育み、地域とともに生活することを楽しんできました。

 

これからもこの蓄積を大切に、地域のみなさんに求められることをしっかり遂行して日々を継続させていきたいと思います。

 

これから専攻医になられるみなさんは、決して孤独ではありません。多くの情報がありサポートがあります。その先輩の意見が自分の価値観と一致しないこともあるかもしれません。それを助言として素直に受け入れ、自分のものとして昇華してほしいと思います。

 

興味のないことを無視するのではなく、自分自身をブレイクスルーして広く深い世界を学んでいくこと、これが総合診療医の素晴らしさと醍醐味です。

 

好奇心あふれるみなさんと一緒に活動ができるのを楽しみにしています。


人に向き合い“先生に診てもらって良かった”と

言われる医師になりたい


Soutarou

Jinnouchi

 

専攻医/陣内 聡太郎 先生


 

Profile

■光市室積出身

■自治医科大(平成28年卒)

■専攻医2年

■趣味:スキューバダイビング

 



▶ 総合診療医を志したきっかけ

中学1年のときに、祖母が亡くなりました。そのとき「人が亡くなるときに何もできないのは嫌だ」と感じたのがきっかけです。

 

しかし高校へ入学し「医学部なんて無理だろう」と友人に言われ、その夢は諦めていました。

 

転機は高校2年です。網膜の手術で全身麻酔をうけ、麻酔の導入中「どこの大学に行きたいの?」という医療者にきかれて「医学部へ行きたい」と言っていたという事実を、術後知りました。

 

「ああ、自分は心の底ではあきらめてなかったのだな」と改めて自覚し、一念発起して医師への道を進みました。自分の中の「医師」とは「何でも診られる」「断らない」総合診療医です。

 

小さいころよく発熱してお世話になっていたかかりつけ医の先生は、いつも優しく頼れる存在で自分も母もとても信頼していました。それこそが自分の中での医師像です。

▶ 現在のへき地医療の印象

須佐へ赴任するまでは「ホルンフェルス」しか知りませんでした。きてみると、日本海の海の美しい青さと、静けさ、何もない…という印象でした。活動をはじめると、患者さんを含めて、生活圏の人と人との距離がとても「近い」と感じました。「生活」そのものを知ることで治療がおこなえることは地域医療ならではです。

 

「医療」の問題が解決しても救われない人が山ほどいて、その人の生活環境や家族背景まで介入する必要がでてくるケースも多々あります。その中で「人」を見ることの大切さを学びました。

 

この地区で医師は私ひとり、という環境においては、自分の医療スキルが地区の医療レベルに直結するので、正直プレッシャーは大きかったです。

 

しかし、住民の方や指導医の先生、近くの診療所の先生、地域医療や福祉スタッフ、みなさんに助けられ受け止めていただいたと感じています。

▶ へき地医療での可能性

須佐では「診療所長」という立場を預かり、責任感が強くなりました。ふだんの診療から「病気」だけではなく「人」と向き合う、この姿勢は身についてきたと思います。

 

毎日の診療で「患者さんに少しでも楽しい気持ちで帰ってもらいたい」と考え、診察後の会話はなるべく病気以外の雑談をして、明るい笑顔で診察室を出ていただくようにしています。趣味の話や、お正月の過ごし方、その人の生活の力になっていることが話題になると、明るい笑顔で帰られる人が多いのです。

 

こうして1年があっという間に過ぎましたが、「先生がいるから安心できる」「先生がいなくなると寂しい」と言ってもらえて須佐という地域で働いて良かったと思えました。

 

地域のお祭り、特に夏の花火大会は本当に圧巻で、間近で迫力がある大花火を見られたことも心に残る思い出です。地域の生活や文化を共にすることで人が生きることによりそい「この人に診てもらって良かった」と思ってもらえるような医師になりたいと思います。